万城目ワールドは、時々時空がゆがむ

* * * * * * * * * * * * * * * * *
女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。
謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。
京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは--
今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない
青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇
* * * * * * * * * * * * * * * * *
私には久しぶりの万城目学さん。
本巻には2篇が収められています。
まずは、「十二月の都大路上下(カケ)ル」。
京都で行われる女子全国高校駅伝に突如出場することになった補欠の女子(超方向音痴)のお話。
まあ、なんということないスポーツ青春物語?と思ったら、万城目学さんらしい仕掛けがあって、楽しめました。
しかし本作での不可思議な出来事が、次作の枕になっているのであります。
2作目、表題作「八月の御所グラウンド」
今まで野球にはあまり縁がなかった大学生・朽木が先輩に無理やり頼まれて、「たまひで杯」という野球の大会に出場することになってしまいます。
30年以上続いているという伝統ある大会だとは言うものの、先輩の集めたメンバーは、野球経験者はほんの数人で、朽木を含めてほとんどド素人の寄せ集め。
初日は何とか9人いたメンバーも、次の回には人数が足りない。
しかし、そこへふらっと現れた若者がメンバーに加わって、何とか試合ができたのです。
そんなこんなで、数回試合を続けるうちに、同じく急ごしらえメンバーで野球のルールすらもよくわかっていない女子・シャオさんが気づくのです。
あの、途中からメンバーに加わった”えーちゃん”と呼ばれる人は、野球史に名の残る沢村投手にそっくりなのではないか?
スピリチュアルな方向で謎は解けていくのですが、沢村や、他の野球好きだったらしき青年たちは、かつて戦場に駆り出されてそのまま生きて帰ることはなかった。
そうした事実と合わせると、とても切ない話なのでした。
万城目学さんの描くワンダーランド・京都ですが、本作はひときわ切なさと悲しみに満ちています。
でも、それを見つめる目がとてもやさしい。
ステキな物語でした。
好きです。
<図書館蔵書にて>
「八月の御所グラウンド」万城目学 文藝春秋
満足度★★★★★