つれづれ映画日記・読書日記

日々の映画鑑賞や読書の感想を綴っています

ザ・フレンド

あえて恋人にならなかった理由


ニューヨークで一人暮らしを送っている作家、アイリス(ナオミ・ワッツ)。

親友であり、恩師でもあるウォルター(ビル・マーレイ)が何の前触れもなく自死してしまい、彼の望みにより彼の愛犬、グレートデンのアポロを引き取ることになってしまいます。

アポロは大きく堂々とした姿ながら、留守番をさせると家を散らかし放題、ベッドを占有してアイリスが床で寝るハメになったりします。
さらに、このアパートは犬の飼育が禁止されていて、アポロを入れたことで管理会社から立ち退きを要求されてしまいます。

だれか別の人に引き取ってもらうか、犬の保護施設に入れようとアイリスは奔走しますがなかなかうまくいきません。

しかしそうこうするうちに、アイリスは友を失った悲しみをアポロと共有するようになり、次第にこの一人と一匹の気持ちが一つになっていきます…。

 

グレードデンは、確かに大きいですねえ。
こんな大きな犬はきちんとしつけされていないと大変なことになりそうです。
散歩でも力負けして引きずられてしまいそう。
でも、一応ウォルターの飼い犬ではあったので、基本的なしつけはできているのです。
アポロの問題行動は、パートナーを失った喪失感故ということなのでしょう。

 

本作は、犬を飼う上の様々な問題を描き出しているのですが、それと同時に、アイリスとウォルターの関係性を深く描いてもいます。

ウォルターは女好き(?)だったらしく、3度結婚していて、元妻二人と現在妻がいました。
実はほんの一時アイリスと付き合ったことも。

けれど結局アイリスとは結婚に至らず、その後「親友」の位置づけで今まで過ごしていたのです。

アイリスは女として彼を特別に好きというワケではなかったけれど、なぜ自分は「結婚」するに足りなかったのか…、と思うとちょっと複雑な気がしてしまうのです。

 

本作ではウォルターの心情は語られることはないので、おそらくということになりますが、彼にとって結婚は、自身の生活の延長。
身の回りのことを気遣ってくれて、そして一時の安らぎを得るための相手を得ることが結婚と考えているのでしょう。

けれどアイリスは、自らを引き上げてくれる自分と対等の相手。
彼女との知的会話を楽しみ、時にはライバルとして見て、そしてまた時には気づかいもする。
性別に関係なく、それはまさに「親友」なのでしょう。

こうした考え方が正解なのかどうかはともかくとして、彼の哲学ではそうだった。
だから彼は自分の大切な愛犬を託すほどに、アイリスを信頼していたということで。

 

それにしてもアイリスに何も言わずにこの世から去ってしまったウォルター。
そして、一方的に犬を押しつけてきたウォルター。

取り残されたこの一人と一匹が、気持ちを寄せていくことをウォルターが期待したのやら否や…。

しんみりといろいろ考えてみたくなるストーリーです。

<amazon prime videoにて>

「ザ・フレンド」

2024年/アメリカ/119分

監督・脚本:スコット・マクギー、デビッド・シ-ゲル

原作:シーグリッド・ヌーネス「友だち」

出演:ビル・マーレイ、ナオミ・ワッツ、サラ・ピジョン、
   コンスタンス・ウー、アン・ダウド、ノーマ・ドゥメズウェニ

 

愛犬度★★★★★

男女の親友度★★★★☆

満足度★★★★☆

マッチング TRUE LOVE

二人の愛の行方が気になる


少し出遅れましたが、みました。
Snow Manさっくん出演の「マッチング TRUE LOVE」。

 

前作から、そのままの続きとなります。

マッチングアプリで出会ったカップルが次々と犠牲になった「アプリ婚連続殺人事件」から2年。

輪花(土屋太鳳)と叶夢(佐久間大介)は交際を始めているのですが、ある日叶夢が突如姿を消し、音信も途絶えてしまいます。

また時を同じくして、かつての事件を模倣するような連続殺人事件が発生。

現場には大量の白いバラ。
遺体の顔には×印が刻まれています。

そして叶夢の失踪から2か月後。
輪花は、南の島で開催されるマッチングツアーにスタッフとして参加。
しかし参加者を待ち受けていたのは、真実の愛を証明できなければ殺されるというデスゲーム。
そして、輪花にも危機が迫る…。

 

このマッチングツアーの参加者はかなり危ない奴ばかり。
次々に起こる残虐な殺人ショーは、そのままSNSで生配信されたりしています。
しかし警察もその場所を特定できない…。

ということで本作でのお約束、グロい殺人シーンがいくつかあり、「真犯人は誰か」的な驚きがあるわけですが、意外と輪花と叶夢のことに焦点が当てられていて、興味が尽きずに見てしまいました。

 

すでに前作で、吐夢が殺人鬼であり、また二人は異母姉弟であるということは明かされているので、そもそもここにラブストーリーはあり得ないだろうと思うわけですが、
輪花はこのことを知らないわけです。

そしてまあ吐夢のことですから、はじめから二人が姉弟であることを承知の上で、輪花を愛し、ストーカーしていたわけで。
そんなことは気にしない、というか、むしろ「家族」が欲しかったのでしょうね。

だから、彼には輪花を傷つける理由は一つもなく、守らなければならないと思っているわけです。

輪花は、吐夢を少し薄気味悪いと思わなくもないのだけれど、
それでも彼女の生命の危機の時に突如現れて、自らの生命をかけて自分を救ってくれる吐夢に対しての思いは、簡単に打ち消せるものではない…。

 

吐夢自身も、この思いをまともに成就するのは難しいと悟り、この愛の「完成形」を密かに思い描いていたりもするのです。

 

そんなわけで迎えるラストは結構納得のいくものでした。
で、それほど期待していなかったけれども、意外とよかったのでは?と思っています。

 

通常テンション高めのさっくんが、ここまで抑えているところもまた、ギャップがあっていいんですよね。

 

そして、本作の主題歌、LiSAさんの「ソフィリア」ですが、YouTubeでMUSiC CLiPが公開されていまして、
土屋太鳳さんと佐久間大介さん、いえ、唯島輪花と永山吐夢のコンテンポラリーダンスが見られます。

初めてこれを見たときはまだ映画をみていなかったので、ステキだとは思ったけれど、あまりピンときませんでした。
でも、映画視聴後に見ると、まさに輪花と吐夢。
二人の胸中がそのまま表現されていてスバラシイです!!

 

<シネマフロンティアにて>

「マッチング TRUE LOVE」

2026年/日本/106分

監督・原作:内田英治

脚本:内田英治、木江恭

出演:土屋太鳳、佐久間大介、クァク・ドンヨン、豊島花、倉悠貴、塚田僚一

 

ドタバタスプラッタ度★★★★☆

ロマンス度★★★★☆

満足度★★★★☆

「愛しいチグサ」島田荘司

一変した世界で

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“愛”と“絶望”

人が「醜い鬼」になった世界

喜びも哀しみも巨匠は掬い上げる

機械の目だけに映る”真実の愛”――

 

西暦2091年、謝荷魚は大事故により身体と脳の一部が機械になってしまう。

リハビリを終えた彼を待つのは、人々が“醜い鬼”になった世界。
絶望する謝は、唯一の人間・チグサと出逢うが――

胸を焦がす、落涙の純愛ミステリ。

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島田荘司さんによる中編ですが、少しいつものものとは趣が異なっています。
というのも、そもそもの出版に至る経緯。

この作は2020年に“One Love Chigusa”として、ロンドンのレッド・サークルという小さな出版社から刊行されたそうです。
そこのリチャード・ネイサン氏に依頼されての執筆で、元日本駐在、英国大使であったサー・デイヴィッド・ウォレン氏による英訳でした。
しかも、日本特有の紙質、微妙な色合いの表現で、草紙本のようなユニークな薄本。
ぜひそれを見てみたいですが…。

その内容ですが、いつものようながっつりの本格ミステリではなくて、ちょっとSFっぽくて、幻想的でもあります。

 

2091年、謝荷魚(シェ・ホーユー)は、大事故による身体損傷のため、身体の大部分を機械と置き換えられてしまいました。
厳しいリハビリの後、社会に復帰しましたが、彼にとっての「世界」は一変しています。

人々、特に女性はみな真っ赤な顔をして、目が吊り上がっている。
そして、胸元には金銭をカウントするカウンターが浮かび上がっている。
どこへ行っても周囲はこんな様子で、溶け込めない彼は、もう生きていてもしょうがないと思い始めるのですが、そんな時、たった一人、美しく清純な女性を見つけます。
彼女に恋い焦がれた謝は、ある時ようやく話しかけることができましたが…。

 

脳の一部も機械と入れ替わった彼には、世界の見え方がこれまでとは違うのです。

とすれば、ただ一人美しいたたずまいをした彼女、チグサの正体はまあ、容易に想像がついてしまいますが。
そのチグサも、謝と話をするうちに少しずつ変わっていくのですね。


風変わりなロマンスストーリーでもあり、衝撃的な近未来のストーリーでもある。

奇妙奇天烈な殺人事件は起こりませんが、やはりいつもの島田荘司さんの語り口。
堪能しました。

 

巻末に、この日本版の特典として“『愛しいチグサ』と、十代の頃の自分”という章が追加されています。
お得です。

 

<図書館蔵書にて>

「愛しいチグサ」島田荘司 講談社

満足度★★★.5