つれづれ映画日記・読書日記

日々の映画鑑賞や読書の感想を綴っています

シルビアのいる街で

白昼夢を誘う古都



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フランス北東部の古都ストラスブール
午前のやわらかな光がさすホテルの部屋と見受けられる場所、
一人の青年の姿が映し出されます。
じっとして動かず、瞑想しているようにも見受けられる。
ノローグも何もナシ。
ひたすらカメラは正面から彼の表情をとり続けます。
やがて彼は外へ出かけ、
今度は、とあるオープンカフェのテーブルについています。
周りの女性客をじっと見つめ、観察し、ノートにスケッチなどしている。
これでようやく彼は画学生か美術関係の勉強をしているのかな?
ということが解ってきます。
何しろ解説の全くない作品です。
セリフもほとんどなし。
街の喧騒、小鳥の声、周囲の人々のささやき声・・・。
まぶしい日差し。
柔らかな風。
そんななかで、私たちは注意深く彼の視線や表情、
周りの人々の様子を見守らなければなりません。

そんなシーンが長く続いて、
彼はふと一人の美しい女性に目をとめる。
やがて女性がカフェを出ると、彼も彼女の後を追い始めるのです。
延々と彼女は歩きます。
青年はすっかりストーカーになってしまって、
彼女の後を歩き続けます。
途中思い切って「シルビア」と呼びかけるのですが、彼女は振り向かない。
疑問だらけですね。
シルビアとは誰なのか。
なぜ青年は彼女の後を追うのか。
彼女は彼を知っているのか。
美しい町並みを、見えつ隠れつしながら歩き続ける二人。

日中のまぶしいほどの日差し、
けだるい午後の光、
そして夕暮れが迫る。
見事に光だけで時間の経過が表されています。
そんな中で、彼女の後ろ姿はまるで白昼夢のよう。
実際に言葉を交わしてさえも、その存在は夢のよう・・・。


美しく、印象的な作品でした。
実は冒頭の青年のルックスにしびれて、見入ってしまいました。
グザビエ・ラフィット、ステキです。
実に何気ない町の人々の描写も、いろいろと仕掛けがあったみたいですね。
いつも花束を持って歩いていたおじさんはなんだったのか。
カフェでベルトを売っていたニイさんは、青年があれほど歩き回った先にも出没。
実はさんざん歩き回ったけれども、
カフェ付近をぐるぐる回っていただけだったのか???
そんなことまで考えさせられて、面白い。

それから、ここの路面電車、トラムというらしいですが、
この古風な町並みなのに、実に近代的でスマートな車体。
カッコいいのです。
こういう電車を是非札幌にも導入しましょうよ、ねえ、市長さん!

シルビアのいる街で [DVD]
ホセ・ルイス・ゲリン,ナターシャ・ブレイア,ルイス・ミニャーロ
紀伊國屋書店


2007年/スペイン・フランス/85分
監督・脚本:ホセ・ルイス・ゲリン
出演:グザビエ・ラフィット、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、ターニア・ツィシー